ボンゴレ最強の守護者とも言われるあの雲雀恭弥が、任務から重症で帰ってきた。
銃弾が、肩に2発と下腹部に1発。
出血はそこまで酷くはない上、彼の生命力は凄まじいから回復は早いだろう。
ただ不可解なのは撃たれた原因だった。
同行した彼の部下は別の場所にいたらしく、銃声しか聞いていないそうで。
恭弥の意識が戻るのを待つしかないようだ。
恭弥が目覚めるまでの間、僕はボスに敵対ファミリーの撲滅も兼ねてこの件について調べるよう命じられた。
「…恭弥、早く起きてくださいね」
撃たれた瞬間の君は、一体何を考えていてどんな表情を浮かべたのでしょうかね…?
想像すればするほど何かが僕の中で込み上げてくる。
医務室のベッドで静かに眠る恭弥の髪をそっと撫でて、肌に触れてみた。
青白い、微かに温かい、それだけ。
つまらない。
君のぶっきら棒に僕を呼ぶ声も、皮肉そうに浮かべる笑みも、
常に弱みを見せない瞳も全て、今は消えて失くなってしまった。
「僕の楽しみを勝手に奪わないで下さい」
君の存在全て、僕の娯楽なのだから
「このスーツ、買ったばかりなんですけどねぇ」
…クリーニング代って、経費で出ますかね?
答えが返ってこない疑問を漏らしてみる。足元には内臓やらなんやらが散らばっていて歩く隙間がない。
それほどまでに殺したのかと言われれば否定は出来ないが、今日はなんだか調子が良くて。
本当に、1人残らずぐちゃぐちゃにしてやった。
とりあえず任務の目的である敵対ファミリー撲滅は成功した。
後は、恭弥の件のみ。
僕の携帯に恭弥が目覚めたという情報は入ってこない。
「…千種、犬。先に帰っていいですよ。僕はもう少し此処で調べ物をしますので」
「あ〜い!了解らびょん」
「…報告書は俺達が書いておきます…では失礼します」
一言二言声をかけると2人はすぐに去っていった。
良く出来た部下を持って僕は幸せですよ。
僕はまず恭弥が撃たれたと思われる場所を見つけることから始めた。
壁や床、建具…あるもの全部に銃痕が無いかどうか、またはトンファーによる殴打した痕が無いか確認する。
銃声が聞こえた場所から距離を推定しておいた為、それはあっさり見つけることが出来た。
広々としているが、家具が不自然に乱雑した洋室。
扉のすぐ横の壁には多量の血痕が付着しており、
近くにあるソファーはカバーが破け、背凭れがへこんでいた。
「此処、に間違いないようですね…」
見渡したところ、特に目立つものは何も無い。
「やはり、恭弥を待つしかないのですか…」
落胆の声を漏らす、そのときだ。
胸の内ポケットに入れてあった僕の携帯が振動したのは。
急いで取り出し画面を見るとそこには『雲雀恭弥』の文字があり、僕はすぐに応答した。
「もしもし恭弥ですか?! 体調は…」
『…君、僕の獲物に手を出したの』
「…………はい?」
『あのファミリーは僕が潰すはずだったのに、…君のせいだ」
声を聞く限り体調は良さそうだが、意味が分からない。
何故僕の責任なんだ。君の不注意であろうに。
心でそうは思ったものの声に出すと色々面倒になりそうだから言葉を飲み込むが。
「よく分かりませんが、先に僕の質問に答えなさい。傷口はいつ頃塞がる予定ですか」
『もう治った。これから僕も其処に行く』
「…真面目に答えて下さい。それに、もう此処の用は済みました。後は君だけです」
『……いいよ、どうせ僕が撃たれた原因でしょ?今話してあげるよ』
あれは、奴等に僕の弱点である話をされたからなんだ。
間髪いれずに恭弥はそう言った。彼に弱点などあっただろうか?
自分が知らないことを知っていた敵に少なからずとも嫉妬する。
僕が苛立っていることを悟られないよう静かに深呼吸し冷静を整う。
「弱点、とは?」
『…一度しか言わないよ。言ったらすぐ電話切るからね』
「?…分かりました」
『…あっちの幹部に、「六道骸、化け物の下で寝るのは気持ち良いのか?」って言われたんだ』
それで頭に血が上って、だけど恥ずかしくて反応できなくて、気がついたら体に穴が開いてた。
『骸は化け物じゃない、人間だ。それに……………ッ、なんでもない!もう切るからね!!』
ブチッ「クフフ……ク、ハハハッ」
あぁ、そうですか。
だから…「僕のせい」なんですね?
「随分可愛いことを言ってくれますねぇ恭弥は…」
帰って顔を合わせたら、僕もどうなるか分からない。
彼の傷が塞がるまで態と会わないでおこうか…?
そして彼から会いに来て僕を求めるよう仕向けよう。
この胸に湧き上がる“モノ”は君にしか抑えることはできないのだから
FIN.